花粉症の治療

花粉症の治療にはどんなものがあるの?

花粉症患者さんが最も知りたいところだと思います。 簡単で副作用が無く、すぐに効果があって、一生その効果が続く治療法があればいいのですが、残念ながらそのような治療法はありません。治療法にはいくつかあり、どれにも良いところと悪いところがあります。自分自身にあった治療法を選んだり、いくつかの治療法を組み合わせて、つらい花粉症時期を少しでも快適に過ごしたいものです。

お薬での治療

もっともオーソドックスな治療法です。ただ、全ての人に効果があるお薬はありません。実際には使ってみないと、そのお薬が自分にあうかどうかはわかりませんし、お薬をのんでから効果が出るのにも数週間かかることもあります。つまり、自分にあったお薬を見つけるのに時間がかかるという点が難点です。 先に示した花粉症発症のメカニズムの中で、抗体がつかないようにしたり、肥満細胞が破裂しにくくしたり、肥満細胞が破裂して出てくるアレルギーを起こす物質に対抗する薬など、作用の異なるお薬も多いので、薬が効かないからとあきらめることなく、お医者さんと相談して違う作用のお薬を処方してもらったり、異なる作用のお薬を組み合わせて使用すると良いでしょう。 また、自分にあっているお薬がわかれば、診察の時にそのお薬を希望されると良いでしょう。

内服薬の代表的な副作用として、眠気やのどの渇きがあります。また、緑内障や前立腺肥大のある方には使用できないお薬もあります。ただ、最近のお医者さんが処方する内服薬では、従来の市販薬と異なり、そのような副作用が少ないものも多く開発されております。よく車を運転する方や、危険な機械を操作する方は、眠くないようなお薬を処方しますので、診察時に申し出て下さい。

点鼻薬にも、いろいろな種類があります。ステロイドホルモンを含んでいる点鼻薬もありますが、適切に使用すれば一般には副作用はありません。当院では作用の異なる種類の点鼻薬を組み合わせて処方することもあります。

手術による治療

アルゴンプラズマ凝固療法(鼻腔粘膜焼灼術)

花粉症で鼻がつまったり、鼻みずが増えるのは、花粉を吸い込まないように粘膜が腫れて花粉をブロックしたり、たとえ花粉が鼻に入ってきても花粉を洗い流すために鼻みずをたくさん分泌するからなのです。だから、花粉が入ってきても、粘膜を腫れにくくしたり、鼻の粘膜から鼻みずが出にくくなるようにするために、花粉症の季節の前に鼻の粘膜を焼いて処置してしまおう、という治療法です。当院ではアルゴンプラズマ凝固療法を行っております。この処置に要する時間は、麻酔時間を含めて30〜40分で、もちろん日帰りで行えます。

花粉症に限らず、鼻づまりの強い方にも効果がありますが、スギ花粉症の治療のためには、スギ花粉が飛散する一ヶ月前には処置を終わらせる必要があります。これは処置した後に、鼻の粘膜が腫れたりカサブタがついたりして、一時的につまりやすくなるので、処置した粘膜が落ち着くのに3、4週間かかるからです。

よくレーザーとの違いを聞かれますが、ともに鼻の粘膜を焼くという目的は同じです。ただその方法に違いがあり、レーザーは点で焼くのに対して、アルゴンプラズマは面で焼くイメージです。そのために、アルゴンプラズマの方が早い時間で処置できるというメリットがあります。また、費用に関してもアルゴンプラズマの方がレーザーより3割負担の方で3,000円程度安く行うことができます。

以上のような治療を行ったうえで効果のない場合は、入院で行う手術があります。鼻の中の空気の通りを良くするために骨を削ったり、鼻みずやくしゃみをひきおこす神経を切断する手術です。入院期間は、手術内容や施設により異なりますが、最近では一泊の入院で手術をしている施設もありますので、どうぞご相談下さい。

舌下免疫療法

スギ花粉症の場合は、スギの花粉にアレルギーを起こしている状態です。アレルギーというのは、体内に入ってきたスギ花粉を異物と判断して、そのスギ花粉を体内から追い出そうとして、鼻みずやくしゃみが出たり、鼻がつまったりして過剰に反応している状態です。

スギ花粉を異物と判断しなければ、このような症状は無くなります。このために、スギ花粉のエキスを毎日口の中に入れてスギ花粉にならしていこう、という治療法(舌下免疫療法)が2014年から出来るようになりました。うまくいけば、体質改善となりますので、スギ花粉症を根本的に治す治療法となる可能性があります。実際の効果は7割程度と報告されております。

具体的には、毎日スギ花粉エキスを使用し、最低でも2年以上使用する必要があります。お薬のようにすぐに効果がでるものではなく、効果が出るのに時間がかかり、2年、3年と使用することで効果が向上し、またその効果も安定していきます。しかし、逆にいえばスギ花粉エキスを毎日、2年以上使用しても3割程度の方には効果が認められない、ということです。

希望する方、全てに行える治療法ではありません。

この治療法は次のいずれかが当てはまる方は行えません。

  • 12歳未満の小児
  • 気管支喘息の方
  • 妊娠中の方
  • 悪性腫瘍(ガン)、重症の心疾患、自己免疫疾患の方
  • 他に内服中のお薬(β阻害薬、長期間のステロイド、免疫抑制剤、抗がん剤など)のある方

その他にも、口腔アレルギーのある方や、急性感染症、抜歯や口内に傷や炎症のある方も使用できないことがあります。また、長期間の治療が必要になりますので、転居の予定があったり、継続して通院することが困難な場合もこの治療法は受けられません。

副作用の可能性がある治療法であることを理解してから治療をはじめて下さい。

アレルギーを起こすものを体内に入れますので、軽度なものから重篤なものまで副作用がありえます。重篤なものはアナフィラキシーショックで直ちに対応しなければ生命に関わります。その場合は救急車を要請するなど、迅速な対応が必要になります。

スギ花粉症以外のアレルギーには効果は期待できません。

スギ花粉エキスを使用しますので、スギ花粉症以外のヒノキ、ダニ、ハウスダスト、カモガヤ、ブタクサなどの他のアレルギーには効果は期待できません。

当院では、この舌下免疫療法は根治療法になりうる治療法として期待しておりますが、以下の理由からご希望される方には大変申し訳ありませんが現時点では導入しておりません。当院で導入する際には、あらためて院内でお知らせします。

  • 重篤な副作用がありうる治療法であること
  • 長期間の通院治療が必要なこと
  • 治療を受けた方、全てに効果があるわけではないこと